卒業研究
小学校段階における絵本の読み聞かせ方法の提案〜将来に役立つ資質・能力を育むために〜
目次
第1章序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)研究の動機
(2)研究の目的
第2章先行研究の動向と本研究の立場・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)先行研究
(2)本研究の立場
第3章予備的考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)絵本とは
(2)読み聞かせとは
(3)絵本の読み聞かせの教育的効果
第4章 ICT機器を用いた思考の促しに着目した絵本の読み聞かせの実践・・(1)実践の目的
(2)実践の方法
(3)本実践の成果と課題
第5章結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)研究の成果と課題
(2)今後の展望
謝辞
引用文献
第1章 序論
(1)研究の動機
幼少期からの絵本のふれあいの経験→“絵本”への興味→教育実習での読み聞かせ→“絵本の読み聞かせ”への興味
(2)研究の目的
ICT機器を使った効果的な読み聞かせ方法について明らかにしたい。
第2章 先行研究の動向と本研究の立場
(1)先行研究①
絵本の読み方で聞き手の受け取り方は変わるのか
-幼児を対象に、抑揚に注目して- 西菜見子、國田祥子、井上亜弥(2018)
ストーリー性のない絵本で抑揚をつけて読む →幼児の表情における反応が増加
ストーリー性のある絵本で抑揚をつけて読む →幼児の表情における反応は増加しなかった
しかし・・・・・・・・減少もしなかった
(2)本研究の立場
悪影響が見られないのであれば…→抑揚をつけて読もう(適度に)
(1)先行研究②
絵本の読み聞かせ時における挿入質問が幼児に及ぼす影響
野崎美衣、成田泉、水内豊和(2019)
挿入質問がない場合 →集中しているが、発言しにくい雰囲気
事象質問をした場合 →自身の生活と結び付けて発言。内容を理解し楽しむ
心情質問をした場合 →発言しようとする園児が少ない。心情質問を答えるのは難しい?
(2)本研究の立場
事象質問7:心情質問3の割合で行おう →事象質問は答えやすいので多めに。
(1)先行研究③
絵本の読み聞かせからの学び
-領域「表現」と領域「言葉」からの考察- 中村三緒子(2020)
3歳児に対する読み方→・静かな声で語りかけるように読む
・読み終わったあとにたくさん気持ちを聞く
4歳児に対する読み方→・絵の見せ方や、説明を工夫する
・絵と文の関係を確かめながら読み進める
・ところどころ説明を加える
・読み終わったら、感じたことを自由に話し合う時間をとる
5歳児に対する読み方→・つぶやき語をしっかりと聞き取りながら読む
・共感の言葉を適度に返しながら読み進める
・静かにゆったりと自然体で読む
・読後の子どもたちの感想をしっかりと聞いて受け止める
(2)本研究の立場
絵の見せ方・説明を工夫して、共感の言葉を適度に返しながら読む。
第3章 予備的考察
(1)絵本とは
「学びあう絵本と育ちあう共同行為としての読み聞かせ」赤羽尚美(2017)によると…
絵本の起源→旧石器時代にさかのぼる。壁に絵を描いて、相手に情報を伝えたのが始まり。
絵本の定義→絵画と文学が融合した物語るメディアであり、絵と文という本来性質の異なるメディアが、深い関わりを持ってまとまった表現世界を生み出し、見る者に語りかけるメディア。
(2)読み聞かせとは
三省堂による『スーパー大辞林』によると…
読み聞かせの定義→(子どもや視覚障害者などに)文章を読んで聞かせること
本論文では、「子どもに絵本を読んで聞かせること」とした。
『読み聞かせは魔法!』吉田新一郎(2018)によると…
読み聞かせの種類
①対話読み聞かせ→読み聞かせの途中で、質問を繰り返し行うことで、読み聞かせを使って読み手と聞き手が話し合いを行う読み方。
②考え聞かせ→読み聞かせの途中で、読み手自身が読んでいて考えた疑問を発してみたり、意味を確認してみたり、難しい言葉をどう理解したかを明らかにしたり、自分とのつながりを話してみたり、次の展開を予想してみたり、これまでの展開をまとめてみたりする読み方。
③対話考え聞かせ→読み聞かせの部分は全て読み手側が行い、最初は、読み手側が見本として「考え聞かせ」をしたあとで、残りは聞き手側自身に「考え聞かせ」をしてもらう方法
④いっしょ読み→聞き手側が読んでいるものを見られる状態で、読み手側が滑らかに、そして表現豊かに読むところを観察することで、一緒に読むように誘われる読み方
( 3 ) 絵本を読むこと・読み聞かせることの役立ち
児童が絵本を読むこと、絵本を読み聞かせることの効果は!?
↓中央教育審議会答申(平成28年12月)を参考にした私の考え↓
①登場人物の表情や行動から、気持ちを察する・読み取ることが出来る。
②絵本の絵の背景などから状況を理解したりなど、普段目の行き届かなかったところに目が行くようになる。
③物語の前の部分から、次の物語を予想することができる。
④面白い発想・表現の絵本から、新しい発見・新しい世界の構築。
⑤自分の考えや思いを、口に出して、言葉で表現することができる。
第4章 ICT機器を活用した思考の促しに着目した絵本の読み聞かせの実践
(1)実践の目的
ICT機器を活用した思考の促しが成り立つのかどうかを明らかにすること
(2)実践の方法
工夫① 遠くでクマが倒れている絵を拡大して表示した。
工夫② オオカミがクマに食べさせてあげているものを隠した。
工夫③ 絵の部分は表示せずに、文字の部分のみを表示した。
(3)本実践の成果と課題
工夫① 遠くでクマが倒れている絵を拡大して表示した。
普通に読む上ではあまり注目のいかないところにも着目できた。
→物語のさらに深い理解に繋がる。
工夫②オオカミがクマに食べさせてあげているものを隠した。
隠された部分への注目は、そうでない部分に比べて上がった。
工夫③絵の部分は表示せずに、文字の部分のみを表示した。
より興味関心が深まったといえる。
“文字→絵”という流れによって、他者と考えを交流することができた。→より想像力が深まった。
パワーポイントならではの工夫を行うことで…
・読み手が注目してほしいところに注目してもらえる。
・読み手が聞き手に考えてほしいことを考えてもらえる。
・読み手側の意図するように、聞き手側を誘導しやすい。
→読み聞かせにおいて、思考を働かせることができるといえる。
・パワーポイントでの読み聞かせならではの工夫が思考を促すことに繋がったといえる。
・より思考を促すためには、アニメーションを加えるなど、さらに工夫を増やす必要がある。
・パワーポイントの工夫だけでなく、話すテンポやスピードも重要である。
~課題~
今後は同じ内容でも、大学生相手ではなく、小学生相手に行うことが望まれる。
第5章 結論
(1)本研究の成果と課題
・第2章から、思考を働かせて聞いてもらうためには、ただ読むだけではなく、読み手の工夫が必要である。
・第3章から、本研究における定義を位置付けることができた。
思考の働くより効果的な読み聞かせ方法について検討することができた。
(2)今後の展望
・ICT機器を使った読み聞かせに関する先行研究については調べられていない。
・小学生を対象に実践を行いたい。
・どれほど思考力に影響しているのかまでは明らかにすることができなかった。
謝辞
竹内研究室のゼミ生、3名の大学生の方々、特に第4章の読み聞かせの実践を進めていく上で欠かせない貴重なご意見を頂きました。お忙しい中、ご協力いただき心より御礼申し上げます。
卒業論文の作成にあたり、ご指導くださいました竹内晋平先生、心より御礼申し上げます。
引用文献
西菜見子、國田祥子、井上亜弥(2018)「絵本の読み方で聞き手の受け取り方は変わるのか-幼児を対象に、抑揚に注目して-」、中国学園紀要、17巻、p165-174
野崎美衣、成田泉、水内豊和(2019)「絵本の読み聞かせ時における挿入質問が幼児に及ぼす影響」、とやま発達福祉学年報、10巻、p41-49
中村三緒子(2020)「絵本の読み聞かせからの学び-領域「表現」と領域「言葉」からの考察-」、人間研究、第56号、p25-33
赤羽尚美(2017)『学びあう絵本と育ちあう共同行為としての読み聞かせ』、風間書房
吉田新一郎(2018)『読み聞かせは魔法!』、明治図書出版株式会社
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